設計および使用上の注意事項

分類別の事故例の解説とその対策

1.Ⅰ型(冷水型)孔食

Ⅰ型(冷水型)孔食は、近年国内で多く経験されるようになった腐食です。
孔食部の上に炭酸カルシウム[CaCO₃]と塩基性炭酸銅[Cu₂(OH)₂CO₃]からなる緑色の盛り上がりを生成し、孔食内部に軟らかい亜酸化銅[Cu₂O]および塩化第一銅[CuCl]を含み、また孔食の間口が広いことなどを特長としています。この腐食は、次の二つの場合に経験されています。

(1)井戸水を扱う給水・給湯用銅管
井戸水を扱う環境では、pHがやや低く、遊離炭酸が多い水で生じています。また、この孔食は、給水用銅管や、給湯使用時以外は水温が下がる一過式の給湯用銅管に発生しています。

(2)開放型蓄熱槽を用いた冷水系の配管および熱交換器の銅菅
コンクリート製蓄熱槽からの溶出成分により、pHは8前後まで上昇し、硬度がやや高くなっている水中で孔食が発生することがあります。また、重合リン酸塩系インヒビターが影響して孔食が発生しています。銅管内面の残留カーボンも影響し発生しています。

Ⅰ型孔食の対策としては、以下が有効です。
①受水槽でシャワーリングと強制排気を併用して、遊離炭酸を低減させることが有効です。
②材料面では、内面をスズコーティングしたSTC銅管、低残留カーボン銅管CLT(旧スミガード)の利用が有効です。

2.Ⅱ型孔食

Ⅱ型孔食は、国内で以前から経験されているもので、循環式給湯系(集中給湯システム)の銅管に生じやすい腐食です。
孔食部の上に塩基性硫酸銅[Cu₄SO₄(OH)₆]の盛り上がりを生成し、孔食内部に亜酸化銅および塩化銅が詰まっており、間口が狭いのが特長です。Ⅱ型孔食は、重炭酸イオンHCO₃-に対し硫酸イオンSO₄²が多く、残留塩素の高い水の中で発生しやすい傾向にあります。
また溶解性シリカSiO₂が多い水中でも発生しやすい事も知られています。
尚、近年の給水・給湯の一過式配管では、Ⅱ型孔食に類似した腐食を多く経験するようになってきています。
Ⅱ型孔食の対策としては、以下が有効です。
①残留塩素および遊離炭酸の低減には開放式脱気機の設置が有効です。
Ⅱ型孔食は、低流速域で発生しやすいことから、
②管内流速を適正に保つことも重要です。
③材料面では、STC銅管の利用が有効です。

3.マウンドレス型孔食

Ⅱ型孔食発生傾向の水でSiO₂(シリカ)濃度の高い場合に生じやすい腐食です。
マウンドレス型はⅡ型孔食とは異なり塩基性硫酸銅あるいは塩基性炭酸銅のマウンドがほとんど存在しません。
孔食部を除く表面はⅡ型孔食では亜酸化銅、オルトケイ酸銅などの皮膜が生成するのに対し、マウンドレス型孔食では水ガラス状の非晶質スケールと亜酸化銅が生成しているのが特徴です。
水ガラス状の非晶質スケールからはSiが検出されます。

4.潰食

潰食は、銅管の表面上の保護皮膜が物理的な作用を受けて継続的に除去されると生じます。
潰食は、腐食面には腐食生成物がみられず、水の下流方向に向かつて馬蹄状にえぐられる様に深く浸食する腐食形態が特長です。
潰食は、機械的な要因と化学的な要因が影響します。機械的な要因は、皮膜剥離作用に関係するものとして、流速、管の曲り、流路の断面形状変化、気泡の混入などです。
つまり潰食は、流速が過大になったり、水流の乱れが激しくなるほど生じやすくなります。
化学的な要因としては、pH、炭酸成分、陰イオンおよび塩成分の飽和度などがありますが、中でもpHが重要です。
漬食の対策としては、以下が有効です。

①管内流速を過大にしないこと。
②バルブの半開など水流の乱れの助長を避けること。
③給湯配管系 に混入する気泡は除去します。
④極端にpHが低い水はアルカリの添加により中和した方がよいもの と考えられます。
⑤材料面では、STC銅管の使用を推奨します。
⑥開放式脱気機の設置が有効です。

5.蟻の巣状腐食

写真に示すように、肉厚内部に複雑に入り組んだ断面形状の腐食が生じることがあります。
この腐食は、その形状から「蟻の巣状腐食」と名づけられました。蟻の巣状腐食は、塩素系有機溶剤の分解生成物により発生することが明らかにされました。
その後、広範な事例の収集がなされ、また種々の薬品について腐食性の検討がなされ、蟻酸や酢酸などの有機酸、アルデヒドやフッ化水素酸(フッ酸)などの腐食媒によって生じることが知られています。
実用的には、塩素系有機溶剤、フロンおよび一部の揮発性潤滑油などが分解して、前記の腐食媒を生成して蟻の巣状腐食を生じることがありますので注意が必要です。また、被覆材の中に前記の腐食媒を含むものもあるので注意が必要です。
対策としては、以下が有効です。
①分解して有機酸などを生じるような揮発性潤滑油を使用しないこと。
②有機酸などを生じる環境で使用しないこと。
③有機酸などを生じる環境で使用する場合、銅管との接触を遮断する措置を講ずること。

6.疲労割れ

疲労割れは、給水管では経験されておらず、一過式の給湯配管で多く経験されています。
これは、給湯使用時と未使用時の温度変化によって、配管が伸縮を繰り返すからです。この割れは、曲がり部、接合部近傍、局所的なへこみ部および他の配管を乗り越す交差配管部などで発生しやすい傾向があります。
それは、これらの部分が系統内で最も応力が集中しやすいためです。
疲労割れ防止には、以下のような配管施工上の注意が必要です。
①ころがし配管部分では振幅30mm程度蛇行させて応力を分散させ、かつ固定バンドの取り付けは1.5m位の間隔で行う。
②交差配管部では、交差部を拘束して、その他の箇所を蛇行配管させ、交差部に集中する応力を他の箇所に分散させる。
③接合部近傍の固定バンドは、接合部から300mm以上離して固定する。300mm未満では、接合部近傍に応力が集中しやすいため。
④曲がり部がコンクリート埋設される場合、曲がり部にクッション材を巻き付けして応力を吸収させる。クッション材を巻き付けしない部位では、被覆材とコンクリートとの境界面で滑りが生じにくいため割れを生じます。これを防止するために、コンクリート埋設長さが750mm以上になる場合は、全長にわたりクッション材を巻き付けた方がより確実です。尚、クッション材としては10mm厚×30倍発泡の発泡ポリエチレンなどが有効です。
⑤配管時に局所的に凹みを付けないことも応力の局部集中を避ける意味で重要です。

7.応力腐食割れ

銅管は通常の環境では応力腐食割れを生じにくい材料で、応力の存在下で使用しても問題にはなりません。
しかし、アンモニアを含む環境や、アンモニアに硝酸イオンや亜硝酸イオンも共存する環境では、応力腐食割れが生じる場合があります。
実用環境では、発泡被覆材がアンモニアを含む場合や、ジュートやグラスウールや発泡スチロールなどの保温材で被覆して、シンダーコンクリートや発泡コンクリートなどの中に埋設した配管において、外面側が湿潤になった場合、割れをもたらす環境になることがあります。
応力腐食割れの対策は、以下のような配管施工上の注意が必要です。
①被覆材を完全なものにすること。
②湿潤になる環境に銅管を埋設しないこと。
③埋設する場合は十分な防水処置を施すこと。また、銅管の応力腐食割れ感受性は、りん(P)含有量とともに高くなりますので、環境側の危険性を除去できない場合には、
④低りん脱酸銅や無酸素銅を使用するのがより確実です。

外面腐食

銅管外面が湿潤な状態にさらされ、そこに存在する液体が酸性か強いアルカリ性を示す場合、外面から腐食が起こり、穴があく場合があります。
酸性土壌、石炭ガラおよび家畜舎の近くの土中に配管したり、水に濡れると酸性や強アルカリ性を示す保温材(牛毛フェルト、グラスウール保温筒)を湿潤な状態で使用すると外面腐食を起こす場合があります。
対策としては、前記保温材を直接銅管に触れぬように施工することで、それ以外の対策は応力腐食割れの場合と同様です。


銅イオンの溶出(青い水)

給水、給湯用配管に銅管を使用した場合、洗濯物、浴槽やタイルの目地などがうす青く(またはうぐいす色に)なる「青い水」現象がまれにみられます。
これは水が青いのではなく、水の中に含まれるわずかな銅イオンと石ケンなどに含まれる脂肪酸が反応してできる化合物(銅石ケン)や、空気中の炭酸ガスと銅イオンが反応してできる緑青によるものです。
(現在、緑青自体の毒性は、ほとんどないことが確認されています。)
一般に金属が水と接すると金属がわずかに溶けてイオンとなります。銅も同じように銅イオン化しますが、通水初期の溶出量が多く、徐々に減ります。
半年から1年位後には銅管内面に保護皮膜が形成され、銅イオンの溶出量も少なくなり、「青い水」現象も解消するのが一般的です。
一方、pHが低い水では銅管の保護皮膜の溶解度が高くなり、銅イオンの溶出量が多いままになります。
また、遊離炭酸も溶出量に影響するため、pHが低く、遊離炭酸が多い水の場合には溶出量が多くなります。
銅イオンの溶出量を抑制するためには、以下のような対策が有効です。
①炭酸水素ナトリウム(NaHCO₃)などを添加してpHを上昇させること。
②材料面からはSTC銅管の使用を推奨します。